はじめに:卒園式スピーチ
卒園式は、子どもたちが保育園で過ごした日々の締めくくりとなる日です。保護者にとっても、先生方にとっても、胸に迫るものがある特別な時間でしょう。
大きくなった子どもたちを前に、どんな言葉を贈ればいいのか。何を伝えれば、この日の思いが届くのか。そう考え始めると、なかなか言葉が定まらないこともあります。
この記事では、卒園式でのスピーチを考える際の手がかりとなるような、いくつかの例をご紹介します。そのまま使うというよりは、ご自身が子どもたちと過ごした日々を振り返りながら、自分なりの言葉を見つけるきっかけにしていただければと思います。

卒園式のスピーチで伝えたいこと
卒園式のスピーチには、決まった型があるわけではありません。ただ、長年の経験の中で、多くの先生方が大切にしてきた要素というものはあります。
まずは祝福と感謝を
式の始まりには、やはり「おめでとう」の言葉が自然です。そして、この日を迎えられたことへの感謝。保護者への、子どもたちへの、そして一緒に過ごしてきた仲間への感謝を、素直な言葉で伝えます。
子どもたちの成長を振り返る
入園したばかりの頃と今とでは、子どもたちは本当に大きくなりました。できなかったことができるようになり、泣いていた子が笑顔で遊べるようになり。そうした変化を、具体的に思い起こしながら語ることで、保護者も子どもたち自身も、歩んできた道のりを実感できます。
心に残る場面を語る
運動会での真剣な表情、発表会での緊張した顔、お散歩で見つけた小さな発見に目を輝かせていたこと。そんな日常の一コマが、実は一番記憶に残るものです。「あのとき」の話は、その場にいた人たちの心を温かくします。
これからへの応援
小学校という新しい世界に踏み出す子どもたちに、何を伝えるか。大げさな励ましよりも、「大丈夫だよ」という安心感や、「困ったら助けを求めていいんだよ」という優しさのほうが、子どもたちの心に届くかもしれません。
保護者とともに歩んできた日々
子育ては、園と家庭が手を携えて初めて成り立つものです。送り迎えの時の何気ない会話、連絡帳でのやりとり、時には悩みを共有したこと。そうした日々への感謝を言葉にすることで、保護者との信頼関係を改めて確かめ合えます。
こうした要素を、自分なりの順番で、自分なりの言葉で組み立てていく。それが、その園らしい、その先生らしいスピーチになっていきます。
卒園式スピーチ原稿のテンプレート
スピーチ原稿のテンプレート①
本日は、お忙しい中を卒園式にお越しいただき、ありがとうございます。保護者の皆様、そして卒園を迎える子どもたち。この日を皆さんと一緒に迎えられることを、本当にうれしく思います。
入園した頃のことを思い出します。お母さんやお父さんと離れるのが寂しくて、泣いていた子もいましたね。それが今では、こんなに立派に成長して。友達と助け合い、新しいことに挑戦し、たくさんのことを学んできました。
忘れられないのは、みんなで育てたお花のことです。小さな種を植えて、毎日水をあげて。「まだ芽が出ないね」と心配そうに覗き込んでいた顔が、芽が出た日には本当にうれしそうで。あのお花畑は、みんなの優しさが育てたものだと思っています。
これから小学校という新しい場所で、新しい友達や先生と出会います。最初は緊張するかもしれません。でも大丈夫。みんなはここで、友達と仲良くする方法も、困ったときに助けを求める勇気も、ちゃんと身につけてきました。自分らしく、元気に過ごしてください。
保護者の皆様、本当にありがとうございました。毎日の送り迎え、行事へのご協力、そして何より、お子さんの成長を一緒に見守らせていただけたこと、心から感謝しています。これからも、どこかで子どもたちの成長を応援し続けたいと思っています。

スピーチ原稿のテンプレート②
今日は卒園式にお集まりいただき、ありがとうございます。この大切な節目の日を、皆さんと分かち合えることをうれしく思います。
この数年間で、子どもたちは本当に大きくなりました。できなかったことができるようになり、苦手だったことにも挑戦するようになり。その一つひとつの変化を見守れたことは、私たち保育士にとっても、かけがえのない時間でした。
運動会のことは、今でも鮮明に覚えています。練習では何度も転んで、悔しくて泣いていた子が、本番では最後まで走り切った姿。あの時の真剣な表情と、ゴールした後の笑顔を、私は忘れません。
小学校では、また新しい世界が広がります。知らないことばかりで、戸惑うこともあるでしょう。でも、ここで学んだこと、友達と過ごした日々は、きっとみんなの力になります。困ったときは周りの人に相談して、助け合いながら、自分らしく進んでいってください。
保護者の皆様、いつも温かく見守り、支えてくださり、本当にありがとうございました。お子さんの成長を一緒に喜び、時には悩みを共有させていただいたこと、心から感謝しています。これからも、子どもたちの未来を応援していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
スピーチ原稿のテンプレート③
本日は卒園式にお越しいただき、ありがとうございます。保護者の皆様、そして卒園する子どもたち。この特別な日を迎えられたことを、心からうれしく思います。
子どもたちは、この園で多くのことを学びました。友達と協力すること、困っている人を助けること、自分の気持ちを言葉にすること。そうした一つひとつが、みんなを成長させてくれました。
クリスマス会のことを覚えていますか。「どんな飾りにしようか」「この歌を歌いたい」と、みんなでアイデアを出し合って。準備は大変だったけれど、当日はとても楽しい会になりましたね。あの時の、みんなで力を合わせる姿は、本当に素晴らしかったです。
これから始まる小学校生活では、新しい友達や先生との出会いが待っています。ここで培った、仲間と協力する心、新しいことに挑戦する勇気を忘れずに。困ったときは、一人で抱え込まずに、周りの人と一緒に乗り越えていってください。
保護者の皆様、いつもご協力いただき、本当にありがとうございました。皆様の温かい支えがあったからこそ、子どもたちはここまで成長できました。これからも、子どもたちの成長を一緒に見守っていけたらと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
これらの例を参考に、ご自身の言葉でアレンジしてみてください。 特定の部分をもっと詳しくしたり、トーンを変えたりすることもできます。何かあれば教えてください。

卒園式スピーチのコツと注意点
スピーチを成功させるには、内容だけでなく、話し方や立ち居振る舞いも大切です。ここでは、実際にスピーチをする際に心に留めておきたいことをいくつかご紹介します。
話すスピードと間の取り方
緊張すると、つい早口になってしまいがちです。でも、ゆっくり話すことを意識するだけで、言葉は格段に伝わりやすくなります。大切な言葉の前後では、少し間を置く。その余白が、聞いている人の心に言葉を届けてくれます。また、感情を込めるべきところでは声のトーンを変えてみる。そうした自然な抑揚が、スピーチに温かみを与えます。
視線の向け方
原稿ばかり見ていると、どうしても一方的な印象になってしまいます。時々顔を上げて、会場の人たちと目を合わせてみましょう。一人ひとりをじっと見つめる必要はありません。会場の前の方、後ろの方、左右と、自然に視線を動かすだけで、「皆さんに話しかけている」という雰囲気が生まれます。
身振りと表情
言葉だけでなく、表情や自然な身振りも、気持ちを伝える大切な要素です。ただし、大げさなジェスチャーは逆効果。自分が普段話すときの動きを少し意識する程度で十分です。そして何より、笑顔。緊張していても、口角を少し上げるだけで、聞いている人も安心します。
話の組み立て
スピーチには、始まりと終わりがあります。最初の挨拶、本題、そして締めくくりの言葉。この流れを意識しておくと、話が散らからずに済みます。特に、伝えたいことが複数ある場合は、一つずつ区切りをつけながら話すと、聞いている人も理解しやすくなります。
練習の大切さ
何度か声に出して読んでみると、言いにくい言い回しや、長すぎる文章に気づきます。本番前に、実際に声に出して確認しておくこと。それだけで、当日の安心感が違います。ただし、一字一句暗記する必要はありません。大まかな流れと、絶対に伝えたいポイントだけ頭に入れておけば、あとは自然な言葉で話せます。
時間への配慮
式全体の進行の中で、スピーチに割り当てられた時間があります。長すぎると子どもたちが疲れてしまいますし、他のプログラムにも影響が出ます。練習の際に時計を見ながら話してみて、時間内に収まるか確認しておきましょう。
緊張とのつきあい方
どんなに経験を重ねても、人前で話すときの緊張は完全にはなくなりません。それは自然なことです。深呼吸をする、肩の力を抜く、笑顔を心がける。そうした小さな工夫で、緊張は和らぎます。完璧を目指すよりも、「この子たちに気持ちを届けたい」という思いを大切に。
周りの意見を聞く
原稿ができたら、同僚や家族に聞いてもらうのもいいでしょう。「ここがわかりにくい」「この表現は素敵」といった率直な意見が、スピーチをより良くしてくれます。
こうしたことを意識しながら準備を重ねていけば、当日は自然と言葉が出てくるはずです。完璧なスピーチを目指すのではなく、子どもたちや保護者への思いを、自分らしく伝えること。それが何より大切です。

まとめ:卒園式スピーチについて
卒園式は、子どもたちが保育園で過ごした日々に区切りをつけ、新しい世界へ踏み出す日です。保護者にとっても、先生方にとっても、胸に迫るものがある特別な時間でしょう。
そんな日に贈る言葉は、飾り立てる必要はありません。子どもたちと過ごした日々を振り返り、その成長を喜び、これからの道のりにエールを送る。ただそれだけのことです。けれど、その素直な思いこそが、聞いている人の心に届きます。
この記事で紹介した例は、あくまで参考です。そのまま使うというよりは、ご自身が子どもたちと過ごした時間を思い起こしながら、自分なりの言葉を見つけるきっかけにしていただければと思います。
話し方や視線の配り方、時間配分といった技術的なことも大切ですが、それ以上に大切なのは、「この子たちに伝えたい」という気持ちです。その思いがあれば、たとえ緊張して言葉が詰まっても、きっと伝わります。
何度か声に出して練習し、同僚に聞いてもらい、少しずつ形を整えていく。そうして準備を重ねることで、当日は自然と言葉が出てくるはずです。
卒園式のスピーチを通じて、子どもたちや保護者との絆を改めて感じ、これまでの日々に感謝する。そして、子どもたちの新しい門出を、心から祝福する。そんな温かい時間になることを願っています。
そのほかのテンプレートは下記を参照ください!




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