「毎朝、園に向かう足が重い」
「あと1年この生活が続くのかと思うと、胃がキリキリする」
「せっかく資格を取ったのに、こんなにしんどいなんて聞いてない」
新卒1年目・2年目で「保育士やめたい」と感じているのは、決してあなただけではありません。むしろ、多くの人が一度は通る壁なのです。
この記事では、なぜ1〜2年目の保育士が「やめたい」と感じやすいのか、そしていったん「続ける」と決めた場合の踏ん張り方について考えていきます。また、本当に辞めたいときの経歴や転職への影響、辞めた後のキャリアパターン、親や周囲への説明の仕方、そして自分のメンタルを守る方法まで、「続ける場合」と「辞める場合」の両方を、できるだけ具体的に整理していきたいと思います。
「続けるべきか」「辞めるべきか」の正解は人それぞれですが、この記事を読み終わるころには、今より少しだけ自分の気持ちが整理されているかもしれません。
新卒・1年目の保育士が「やめたい」と感じやすい3つの理由
理想とのギャップが大きい(子どもと向き合う時間<雑務・責任)
養成校や実習のころは、子どもとじっくり関わる時間や、製作や行事でのキラキラした瞬間をイメージしていた人が多いのではないでしょうか。ところが、いざ現場に入ると、書類や連絡帳、日誌などの事務作業、会議や打ち合わせ、行事準備、ケガやトラブルなど想定外への対応、保護者対応やクレーム対応など、「子どもと遊ぶ以外の仕事」の比重が想像以上に大きいことに驚かされます。
しかも1年目であっても、子どもの命を預かる責任はベテランと同じレベルで求められます。「まだ慣れていないのに、責任だけは一人前」という状態になりやすく、「自分に向いていないのでは」「失敗したらどうしようと常に不安」と、慢性的な緊張で疲れ切ってしまう人は少なくありません。
人間関係・連携のストレスが大きい
1年目・2年目で大きな悩みとなりやすいのが、職場での人間関係です。担任同士やフリーの先生との連携がうまくいかなかったり、ベテランの先生にきつく指摘されたり、園長や主任に相談しづらい空気があったり、自分だけ仕事が遅くて申し訳なさとプレッシャーが増していくような状況に直面することもあります。
特に「子どもに関わるやり方」には、先生ごとの価値観やこだわりがあります。その違いがストレートな言葉でぶつかってくると、「自分ばかり怒られている気がする」「何をやっても認めてもらえない」と感じてしまうこともあるでしょう。こうした人間関係のストレスが、仕事そのものを嫌いにさせてしまうケースは珍しくありません。
体力・生活リズムが合わず、常に疲れている
朝が早く、行事前には残業も増えがちな保育現場。1年目・2年目はまだ体力も仕事のペース配分もつかめず、帰宅後は夕飯を食べて寝るだけ、休日も寝て終わってしまいリフレッシュできない、行事準備でプライベートの時間が削られ続けるという状態に陥りがちです。
常に疲れていると、判断力もメンタルも弱ってきます。そうなると「こんな生活が何年も続くの?」「ここまでして続ける意味ある?」と、本来より悲観的な結論に飛びつきやすくなってしまうのです。
まず「続ける」を選ぶなら、3か月〜1年の踏ん張り方
「今すぐ辞めたい気持ちはあるけれど、できればもう少し続けてみたい」。そう感じているなら、ただ我慢するのではなく、期限とやり方を決めて踏ん張るという方法があります。
期限を決めて「あと○ヶ月だけ続けてみる」
「いつまで続くか分からないしんどさ」は、人を一番追い詰めます。「とりあえず年度末まで」「最低でもあと3か月は続けてから判断する」「2年目の夏までやって、そこで一度見直す」といった形で、自分の中の「見直しの期限」を明確にしておくと、「この3か月は実験期間」「ここまで頑張って無理なら、そのとき辞める選択をしていい」と、少し心の余裕が生まれてくるものです。
今の園で「変えられること」と「変えられないこと」を分ける
しんどいポイントを紙に書き出して、自分の工夫で変えられることと、園の風土や人間関係など自力では変えにくいことに分けてみましょう。自分で工夫しやすい例としては、書類や準備の優先順位のつけ方、先輩への相談の仕方(「質問ノート」を作るなど)、家事の外注や簡略化(食事の宅配や冷凍食品の活用など)、スマホ時間を減らして睡眠を増やすといったことが挙げられます。
一方で変えにくいこととしては、園長や経営層の考え方、園全体の人員配置や給与水準、長年続いている暗黙のルールなどがあります。変えられないことで消耗している場合は、「ここに自分を合わせ続けるのか」「別の園なら楽になるのか」という視点で、一度冷静に見直すきっかけにすることができます。
「一人で抱えない」仕組みをつくる
1年目・2年目でつらくなる大きな理由は、相談相手の少なさです。同期、別の園で働く友人、家族、第三者(カウンセラーやキャリア相談サービスなど)など、「仕事の話をしてもいい相手」を3人以上、頭の中にリストアップしておきましょう。「愚痴を言う自分が嫌」と感じる人もいるかもしれませんが、吐き出す場があること自体がメンタルの保険になります。
「小さなできた」を可視化して、自分を責めすぎない
1〜2年目は、とにかく「できていないこと」に目が向きがちです。今日できたことを3つ書く、子どもや保護者から言われてうれしかった一言をメモする、月に1回「この1ヶ月で成長したこと」を振り返るなど、「できたこと日記」のようなものを続けると、「自分は何もできていないわけじゃない」「少しずつだけど、成長している」と、自分を見る目が変わってきます。
本当に辞めたいときに知っておきたいこと(経歴・次の求人への影響など)
「続ける努力はした。でも、それでもやっぱり限界かも」。そう感じている人に向けて、辞める前に知っておきたい現実を整理していきます。
「1年目・2年目での退職」は、経歴としてどう見られる?
一般的に、1年未満の場合はすぐ辞めた印象はあるものの、事情説明次第で挽回は可能です。1〜2年の場合は短めではありますが、「経験はしてみた」と評価されることも多いといえます。ポイントは、「なぜ辞めたのか」「次の職場で何を大事にしたいのか」を、自分の言葉で一貫して説明できるかどうかです。
「なんとなく合わなくて…しんどくて…」といった曖昧な説明ではなく、例えば「早番・遅番の連続で生活リズムが崩れ、体調を崩したため。ただ、子どもと関わる仕事自体は続けたいので、もう少しシフトが安定した職場を探したいと考えています」といったように、「逃げた」ではなく「自分の健康や将来を考えた選択」として語れるかが大切です。
「第二新卒」として見てもらえる期間
一般的には、卒業後1〜3年ほどは「第二新卒」として扱われることが多いです(厳密な定義は企業によって異なります)。他業種や他職種にチャレンジしやすく、「ポテンシャル採用」として見てもらえたり、「未経験歓迎」の求人にも応募しやすいなど、年齢的な強みがまだ大きいタイミングといえます。
「自分は何もスキルがない」と思い込まず、保護者対応は対人コミュニケーション力、書類や行事準備はタスク管理スキル、複数の子どもを見ることはマルチタスク処理力といったように、保育士経験を他の仕事の言葉に置き換える視点も持っておくとよいでしょう。
退職の伝え方・時期の選び方
法律上のルールや具体的な手順はケースによって異なりますが、一般的な考え方としては、できれば行事の大きな山場を避け、園やクラスの引き継ぎ期間を確保できるよう早めに伝えること、そして「園への不満」より「自分の事情や今後のキャリア」を中心に話すことを意識すると、お互いにとってダメージが少なくなります。
辞めた後のキャリアパターン(1年目で辞めた人の実例イメージ)
ここからは、実際によくあるキャリアのパターンをモデルケースとして紹介していきます。特定の個人の実話ではなく、よく見られるケースを組み合わせたイメージ例としてお読みください。
パターン① 別の保育園・こども関連施設に転職する
1年目で保育園を退職し、しばらく休んだあと、小規模園や企業主導型、児童福祉施設などに転職するケースです。「園が変わっただけで、負担感がかなり変わった」と感じる人も多くいます。よくある変化としては、定員が少なく一人ひとりと向き合いやすい、残業や行事負担が少ない職場を選んだことで体力的に楽になる、前職でのしんどさを活かし「自分の限界ライン」が分かっているといった点が挙げられます。「保育そのものは好きだけど、前の園の働き方が合わなかっただけだった」と気づく人も多いパターンです。
パターン② 事務・医療事務・受付など、対人+オフィスワークへ
「子どもは好きだけど、体力的に続ける自信がない」「もう少し落ち着いた環境で働きたい」という人が、医療事務、受付、一般事務、コールセンターなどに転職するケースもよくあります。保育士経験は、丁寧な言葉づかい、相手の気持ちをくみ取る力、イレギュラー対応への耐性として評価されることもあります。
パターン③ 一度フリーター・アルバイトで立て直し、改めて進路を考える
心身が限界に近い人は、いったんカフェやコンビニなどのアルバイト、派遣や短期の仕事などで「働きながら休む」期間を取るケースもあります。この期間に、自分がどんな働き方を望んでいるか、何をしているときにストレスが少ないか、これから数年で身につけたいスキルは何かをじっくり考え、半年〜1年ほどかけて次のステップを決める人もいます。
パターン④ 学び直し・資格取得をして別の専門職へ
少数派ですが、心理や福祉系の資格、事務やIT系の資格、保育とは別の国家資格など、学び直しを経て専門職に進むケースもあります。保育士としての経験は「人の成長を支える仕事が好き」という軸につながることが多く、福祉、教育、医療など、人を支える領域で活かされることが少なくありません。
親や周囲への説明の仕方・メンタルの守り方
「1年目・2年目で辞める」と伝えるとき、一番怖いのは親や周りからの反応かもしれません。
親には「決意+準備していること」のセットで伝える
親に伝えるときは、今のしんどさ(事実)、自分なりに続ける努力をしたこと、それでも辞めると決めた理由、辞めたあとどう動くつもりか(具体案)の4つをセットで話すと、感情的な反発を減らしやすくなります。
例えば「この1年で体調を崩すことが増えて、夜も眠れない日が続いています。園長や先輩にも相談して働き方を変えようとしましたが、今の体制では難しそうです。子どもと関わる仕事は好きなので、もう少し落ち着いた環境の園か、事務系の仕事に転職したいと思っています。すでに求人も調べ始めていて、○月までに次の職場を決めるつもりです」といった伝え方です。「辞めたい」だけでなく、「その後どうするか」まで話すことが大切です。
「自分を責める言葉」を少しずつ減らす
しんどいときほど、「自分は根性がない」「1年も続けられないなんてダメだ」「みんな頑張っているのに自分だけわがまま」と、自分を責める言葉が増えていきます。でも、仕事を辞めたり変えたりすることは、命や心を守るための選択であって、「逃げ」や「甘え」とは限りません。「今の環境が自分に合っていないだけかもしれない」「別の場所なら力を発揮できるかもしれない」と、自分ではなく環境との相性という視点も、少し横に置いておきましょう。
比較のSNSから一度距離を置く
SNSには、キラキラした保育士アカウントや、仕事もプライベートも充実して見える同年代の投稿がたくさん流れてきます。しんどいときにそれを見ると、「自分だけうまくいっていない」「周りはちゃんと働いているのに」と、必要以上に落ち込んでしまうこともあります。一時的でもいいので、SNSアプリをホーム画面から外したり、ログイン回数を意識的に減らすなど、比較から距離を置く工夫をしてみてください。
さいごに:続けても、辞めても「失敗」ではない
1年目・2年目で「保育士やめたい」と感じるのは、あなたが真面目に向き合ってきた証拠でもあります。もう少し続けてみる、園を変える、保育から離れて別の仕事に挑戦する。どの選択をしても、あなたの人生そのものが「失敗」になることはありません。
大事なのは、なんとなく流されて決めるのではなく、「自分はどう生きたいか」「どんな日々を送りたいか」を、少しずつでも言葉にしながら選ぶことです。この記事が、あなたが少しだけ「自分の味方」でいられるきっかけになればうれしいです。


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