「保育園の面接で何を聞かれるんだろう…」そんな不安を抱えていませんか?
この記事では、採用側の評価軸から逆算して、よく聞かれる質問と効果的な回答方法を体系的に解説します。想定Q&A、回答テンプレート、当日のチェックリストまで、面接準備に必要なすべてを網羅しました。
この記事でわかること
保育園の面接準備に必要な情報を、実践的かつ体系的にまとめています。
- 採用担当者が重視する5つの評価軸(保育観/安全管理/保護者対応/チーム協働/園への理解)
- 実際の面接でよく聞かれる質問58例とカテゴリ別の整理
- 採用される人が使っている回答テンプレート(STAR法/事実→示唆→行動)
- 園研究の深さが伝わる効果的な逆質問の作り方
- 面接1週間前からの準備ロードマップと当日チェックリスト
まず知っておきたい「評価軸」──質問はここから生まれる
保育園の面接で聞かれる質問は、実は国の指針に基づいて組み立てられています。厚生労働省の「保育所保育指針」では、保育の内容、健康・安全、子育て支援(保護者連携)、計画と評価、職員の資質向上といった観点が示されており、面接官はこれらの視点から応募者を評価しています。
つまり、あなたの経験をこれらの観点でどう語れるかが、合否を分ける重要なポイントなのです。
特に重視されるのが「第3章 健康及び安全」の領域です。事故対応、ヒヤリハット事例、避難訓練、誤嚥・アレルギー・感染症への対応といったテーマは、ほぼ確実に深掘りされます。
また近年は、感染症対策や家庭との連携がより重視される傾向にあります。面接での回答に感染症対策ガイドラインの内容を盛り込めると、専門性の高さをアピールできるでしょう。
さらに、園外活動(散歩・園外保育)の安全計画についての理解を問う質問も増えています。国の留意事項に基づくリスクアセスメント、適切な職員配置、経路の事前確認などを簡潔に語れると、実務経験の豊富さが伝わります。
よく聞かれる質問リスト──カテゴリ別58例
実際の面接でよく聞かれる質問を、評価軸に沿って8つのカテゴリに分類しました。それぞれの質問の背景にある「採用側の意図」を理解することが、的確な回答への第一歩です。
1) 保育観・子ども観(基礎的な考え方)
保育士としての価値観や、子どもへの向き合い方の基盤を確認する質問群です。
- あなたが考える「養護」と「教育」の一体的な保育とは?(5領域のどの領域に特に関心がありますか)
- 「子どもの最善の利益」をどう解釈し、日々の関わりでどのように実現していますか?
- 観察→記録→計画→評価のサイクルで、特に意識していることは何ですか?
- 気になる行動が続く子どもへの関わりで、工夫していることを教えてください
- 発達に凸凹がある子どもへの個別化や合理的配慮の実例を聞かせてください
2) 安全・衛生・事故対応
保育の現場で最も重視される安全管理能力を測る質問です。
- ヒヤリハット事例の共有と再発防止の仕組みづくりについて、具体的に話してください
- 誤嚥、アレルギー対応、与薬管理でのルール徹底の工夫を教えてください
- 避難訓練(火災/地震/不審者対応)でのあなたの役割と、改善に取り組んだ点は?
- 午睡時の見守り(SIDS予防を含む)で特に注意している点を教えてください
- 散歩や園外活動時のリスク評価と、動線・隊列管理の方法を具体的に説明してください
3) 感染症対応
コロナ禍以降、特に重視されるようになった感染症管理の質問です。
- 感染症流行時のクラス運営(人員配置・動線確保・消毒)で実践した工夫は?
- 発熱・下痢・嘔吐時の初動対応と、記録・保護者連絡のフローを説明してください
- 感染症流行後の振り返り(保健だより作成/職員研修)をどのように実施しましたか?
4) 保護者対応・連携
保護者との信頼関係構築能力を確認する質問群です。
- 初めて会う保護者の不安を和らげるための、第一声での工夫を教えてください
- クレームや強い要望を持つ保護者への傾聴・合意形成の実例を聞かせてください
- 連絡帳や送迎時の情報共有で、特に重視しているポイントは何ですか?
- 虐待が疑われる兆候を見つけた際の、エスカレーション(報告・連携)の流れは?
- 家庭状況に配慮した支援(多言語対応・ひとり親家庭等)の経験を教えてください
5) チーム協働・働き方
組織の一員としての協調性とコミュニケーション能力を測る質問です。
- 学年リーダーやフリー保育士として、チーム連携で意識した要点は何ですか?
- 職員間で意見が割れたとき、合意形成のためにどのように動きましたか?
- 新人育成や実習生受け入れで、特に意識している支援のポイントは?
- ICT活用(記録・連絡・ヒヤリハット管理)での具体的な貢献を教えてください
- 残業削減や急な欠員時の対応と、自己管理の工夫について聞かせてください
6) 園研究・志望動機
応募先への理解度と入職後の貢献可能性を確認する質問です。
- 当園の保育方針や特色のうち、特に共感した点は?具体的にどう貢献できますか?
- 園見学で気づいた改善の余地と、自分ならどのように関わりたいですか?
- 短期・中期のキャリア目標(取得したい資格・受けたい研修)を教えてください
- シフトや勤務条件で、事前に配慮が必要な点があれば教えてください
- 他の園ではなく、当園を選んだ理由を一言で表すと?
7) 実技課題(よくある出題内容)
実際の保育スキルを確認するための実技試験です。
- 手遊び:季節や年齢に応じた選曲、導入の言葉、締めくくりまでの流れ
- 絵本読み聞かせ:ページ送り、視線配り、抑揚のつけ方、子どもへの投げかけ
- 保育案プレゼン:数分間で、ねらい/活動内容/環境構成/評価の観点を説明
8) ケーススタディ(ロールプレイ)
実際の保育場面を想定した対応力を測る質問です。
- 登園直後に泣き続ける2歳児への、具体的な関わり方を実演してください
- 園庭で転倒して擦過傷を負った子がいて、周囲の子どもたちがざわついている状況での対応
- 保護者から「連絡が遅い」との指摘を受けた際の、具体的な対応方法
9) ガイドライン理解(根拠を持って語る)
保育の専門知識と理論的背景の理解度を確認する質問です。
- 保育の5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)を活かした活動例を1つ挙げてください
- 「計画と評価」のサイクルを回すための、記録・振り返りの工夫を教えてください
※これらの質問の背景には、保育所保育指針や感染症対策ガイドラインがあります。回答の際に根拠となる指針に触れられると、専門性の高さが伝わります。
採用される人が使う「回答テンプレート」
面接での回答は、ただ経験を語るだけでは不十分です。構造化された方法で、論理的かつ具体的に伝えることが重要です。
テンプレート1:STAR法(状況→課題→行動→結果)
最も効果的な回答フレームワークの一つです。
【状況 Situation】
3歳児クラスで、午睡明けの切り替えがうまくいかず、
泣き出す子が続出する状況が2週間続いていました
【課題 Task】
覚醒のタイミングと、その後の活動への移行方法に
改善の余地があると考えました
【行動 Action】
①起床時刻を個別に記録し、早く目覚める子には
静かな遊びコーナーを用意
②目覚めのルーティンを絵カードで視覚化
③トランジション遊び(体を動かす簡単な遊び)を導入
【結果 Result】
2週間で泣き出す子が5人→1人に減少
見通しを持って行動できる子が明らかに増えました
【学び Learning】
設定保育の内容だけでなく、環境構成と
切り替えの仕組みづくりが重要だと実感しました
テンプレート2:事実→意味づけ→次の関わり
シンプルで使いやすい三段階の説明方法です。
【事実】
午睡明けの機嫌の波が大きい子が2名いました
【意味づけ】
覚醒タイミングと切り替え手順が、
個々の子どもに合っていないと分析しました
【次の関わり】
目覚めのルーティンを絵カードで視覚化し、
トランジション遊びを導入することで改善しました
模範回答例:事故対応の質問への回答
具体的な回答例を見てみましょう。
質問:「園庭での転倒事故にどう対応しますか?」
「園庭で転倒してひざを擦りむいた場面では、安全確保→応急処置→記録→保護者連絡→振り返りの順で対応します。
具体的には、まず周囲の子どもたちを集めて遊びを一旦停止し、安全を確保します。次に出血状況を確認後、流水で洗浄し圧迫止血を行います。その後、ヒヤリハット報告のフローに沿って、時刻・場所・対応者を記録します。
お迎え時には、保護者に経過を丁寧に説明し、家庭でのケア方法もお伝えします。そして週会で園庭の配置を見直し、コーナー遊具の位置と動線を調整して再発防止に努めます。」
このように、保育所保育指針の「健康及び安全」の観点に基づいた説明をすることで、専門性の高さが伝わります。
園研究の深さが伝わる「逆質問」の作り方
面接の最後に必ず聞かれる「何か質問はありますか?」は、あなたの関心の深さと準備の丁寧さをアピールする絶好の機会です。
効果的な逆質問の例
計画と評価について
「年間指導計画の立案から評価までのサイクルは、どの記録を軸に回されていますか?日誌、週案、個人記録のうち、特に重視されているものを教えてください」
安全管理について
「園外活動の安全計画で特に重視している点を教えてください。散歩コースの選定基準や、隊列の組み方、人員配置のルールなどについて伺いたいです」
感染症対応について
「感染症流行期の職員体制と、家庭との連携での工夫を教えてください。掲示物や保健だよりなど、どのような方法で情報共有されていますか?」
研修・育成について
「新任研修や園内研修の体系と、評価面談の頻度について教えてください。職員の資質向上のために、どのような取り組みをされていますか?」
逆質問で避けるべき内容
- 給与や休日など、待遇面ばかりの質問
- HPや求人票に明記されている基本情報
- 「特にありません」という回答
逆質問は、あなたの園への関心の深さと保育への専門性を示す最後のチャンスです。事前の園研究を活かして、運営の核心に迫る質問を準備しましょう。
1週間で仕上げる準備ロードマップ
面接の1週間前から、計画的に準備を進めることで、自信を持って当日を迎えられます。
| 日程 | 準備内容 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| Day 1 | 園研究 | 求人票・園HP・SNSで情報収集 理念・保育方針・年間行事を整理 園の特色や強みをノートにまとめる |
| Day 2 | 実例の言語化 | STAR法で実例3本を作成 (安全管理・保護者対応・チーム協働) 数字や具体的な回数を盛り込む |
| Day 3 | 実技準備 | 絵本1冊・手遊び1曲・5分間の保育案を選定 実際に声に出して練習 年齢に応じた適切な内容か確認 |
| Day 4 | 専門知識の確認 | ヒヤリハット報告の型を復習 感染症対応の要点を整理 保育所保育指針の重要箇所を再確認 |
| Day 5 | 模擬面接 | スマホで録画しながら模擬面接 言い回しや表情をチェック 言語化が難しい部分を微修正 |
| Day 6 | 書類・持ち物準備 | 履歴書、ポートフォリオの最終確認 道順と到着時刻を確定 持ち物リストをチェック |
| Day 7 | 体調管理 | 十分な睡眠をとる 当日の持ち物を再点検 心身をリラックスさせる |
当日の持ち物・服装チェックリスト
面接当日は、準備の漏れがないよう、このチェックリストを活用してください。
必須の持ち物
- 書類関係
- 履歴書(写真貼付済み)
- 資格証(保育士証等)のコピー
- 成績証明書(新卒の場合)
- 職務経歴書(中途の場合)
- 実用品
- 上履き・靴を入れる袋
- 腕時計
- 筆記用具(黒のボールペン、メモ帳)
- 絵本・手遊び用の小物(指示があった場合)
服装のポイント
- 清潔感のある動きやすい服装
- 無地系のトップス
- 膝が動かしやすいボトムス(実技に備えて)
- 派手すぎない色合い
- アクセサリーは控えめに
- 身だしなみ
- 髪は清潔にまとめる
- 爪は短く整える
- 香水は控える
到着時間と心構え
到着は15分前を目安に。受付での第一声と笑顔を準備しておきましょう。早すぎても遅すぎても、園の業務に支障をきたす可能性があります。
言い換え辞書──NGワードをOKワードへ
面接での言葉遣いは、あなたの専門性を大きく左右します。曖昧な表現を具体的な言葉に変換するだけで、印象が劇的に変わります。
NG→OK変換例
子どもの様子を伝えるとき
- NG:「落ち着きがない子です」
- OK:「活動中に席を離れる場面が1日3回程度あります。ただし、声かけによって2分以内に着席に戻れる状態です」
苦手分野を伝えるとき
- NG:「保護者対応は苦手です」
- OK:「保護者対応では、最初の3分は傾聴に徹し、その後事実確認→選択肢の提示→合意形成の順で話を進めることを意識しています」
安全管理を語るとき
- NG:「安全には気を付けます」
- OK:「点呼→役割確認→動線確認→見通し共有の順で確認し、ヒヤリハット事例は24時間以内に共有するようにしています」
改善点を伝えるとき
- NG:「もっと勉強したいです」
- OK:「現在、発達支援に関する研修を受講中で、来年度は障害児保育の専門研修も受講したいと考えています」
このように、具体的な数字、明確な手順、実際の行動を盛り込むことで、説得力が格段に増します。
面接後のフォローアップ──お礼メールテンプレート
面接後24時間以内にお礼のメールを送ることで、好印象を残せます。件名:本日の面接のお礼(氏名) ◯◯保育園 採用ご担当者様 本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。 園見学で拝見した自由遊びの環境構成や、 園外活動における安全計画の徹底ぶりに、大変感銘を受けました。 もし入職の機会をいただけましたら、 観察→記録→計画のサイクルを大切にしながら、 健康・安全の確保と保護者との信頼関係構築の両面で 貢献させていただきたいと考えております。 まずはお礼まで。 引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 ──────────────── 氏名 連絡先(電話番号) メールアドレス ────────────────
参考資料──面接で根拠として活用できる公的文書
面接での回答に説得力を持たせるため、以下の公的資料を事前に確認しておくことをお勧めします。
主要な参考資料
- 保育所保育指針(厚生労働省)
総則、保育の内容、健康及び安全、子育て支援、職員の資質向上など、保育の基本が体系的にまとめられています - 保育所保育指針の概要
5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)や、計画と評価のサイクルが分かりやすく整理されています - 保育所における感染症対策ガイドライン(厚生労働省)
園内での感染症対策の基本的な考え方と、具体的な対応方法が示されています - 保育所等における園外活動時の安全管理に関する留意事項
散歩時の隊列の組み方、人員配置、リスクアセスメントの方法などが解説されています
これらの資料に基づいて回答することで、「この人は保育の専門知識をしっかり持っている」という印象を与えられます。
まとめ──面接は「経験の再現力」を見る場
保育園の面接は、経験を美辞麗句で飾る場ではありません。保育所保育指針に基づく実務を、自分の言葉で再現できるかが問われる場です。
準備の4ステップ
- 評価軸を理解する
採用側が何を見ているのか、指針から逆算して把握する - 質問リストで具体化する
58の質問例から、自分の経験と結びつくものをピックアップ - テンプレートで言語化する
STAR法や「事実→意味→行動」で、具体的に語れるよう準備 - 1週間ロードマップで仕上げる
計画的に準備を進め、当日に自信を持って臨む
この順番で準備すれば、どの園の面接でも通用する「軸の強さ」が身につきます。
保育園の面接は、あなたの保育への想いと専門性を伝える貴重な機会です。しっかりと準備をして、自信を持って臨んでください。

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